TOP 食バンクマガジン 飲食業界の鉄人インタビュー 宮脇 和也さん
鉄人インタビュー
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飲食業界の鉄人インタビュー 宮脇 和也さん
飲食業界の鉄人インタビュー 宮脇 和也さん
2017年3月10日
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【鉄人プロフィール】
宮脇 和也
高校卒業後、京都・岡山の洋菓子店にて勤務
23歳で神戸 レーブ・ドゥ・シェフに入社 製造部係長を務める
その後、パティスリー キルフェボンのグランシェフとして招かれる
2007年7月 京都精華町にてパティスリー ル・フルティエを開店
修業時代に苦労したことはありますか?
記者: 有名パティスリーでの勤務を経て、それぞれの店舗ごとの仕事の進め方や考え方を見て来られた上でご自身のパティスリーをオープンされた宮脇さんですが、 修行時代に苦労したことはありますか?
宮脇: パティシエとして苦労を感じたことはないですね。神戸での修行時代に早朝から夜中まで働いて、夜中の2時ぐらいから「試作するぞ!」って師匠に言われたときは「数時間後には仕事やのに・・・」って思ったりもしましたけど。
記者: 聞くだけでも大変そうだと思ってしまうんですが、その経験があるからこそ今があるんですね。 本当に職人さんの世界、という印象です。昔から技術を覚えたりするのは早かったんでしょうか?
宮脇: いや、今もそうだけど、元からすごく不器用で(笑)でも自分が不器用ってことはこの世界に入る前から分かっていたし、不器用だということをネガティブに考えることはなかったですね。 逆に自分が不器用だと分かっているからこそ「体で覚えるしかない!」と考えて「できるようになる」まで何度も何度も練習を重ねて技術を身につけることができたんだと思います。
独立してから一番苦労されたことは何でしょうか?
宮脇: 一番苦労したのは、3年前ですね。ほとんどのスタッフが一斉に辞めてしまったんです。 母の日の前日でお店が忙しい時期だったんですけど、数名の残ったスタッフと一緒に乗り越えたことを覚えています。 今だからこうやって笑って話せるけど、あれは本当に辛かったですね(笑)
記者: なぜ、一斉に辞められたんでしょうか?
宮脇: 結局理由は直接聞けなかったので本当の理由はわからないですが、不満を抱えていたんだと思います。 朝早くから夜遅くまで働いて、休日も少なく修行時代は給与も低いから耐えられなくなったんだと思います。 うちで働く以上は中途半端に学ぶのではなく、自分のお店と思って経営から技術・知識まで全て責任を持って学んでほしい!という気持ちを伝えることができなかったんでしょうね。 厳しいかもしれないけれど、人を雇うということは一人ひとりの人生を背負うということです。 パティスリーならいくつもある中でせっかくうちで働いてもらうなら、パティシエとしても人間としても周りから必要とされる人になってほしいと考えていたんですが、それが伝わらなかったのは残念です。 僕自身も修行時代を経て、周りの企業からスカウトをいただいたりして、今の自分があるので。
パティシエとしての仕事のやりがいや苦労を教えていただけますか?
宮脇: パティシエとしての仕事のやりがいと苦労は、師匠から「お客さんに出すからには、素材の味を超えないとだめ」と教えられたことですね。 生地やチョコレートの配合の分量を変えて何度も試作を重ね、完成まで半年をかけた商品もあるし、それだけ手間と時間をかけても結局商品として販売できないものも多くあるので、 やりがいと苦労は紙一重だと思います。
宮脇オーナーの今後の目標を教えてください。
宮脇: 今後の目標は、うちで働くスタッフ一人ひとりを幸せにすることです。もちろん給与も上げていきたいし福利厚生もしっかりと整えたいと考えています。 ただ単に働くのではなく、独立や転職などで活かせるような、次に繋がる技術や経験を身に付けてほしいですね。 そのためには僕自身が常に「守りの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」で催事に出たりお店の集客を上げていかなければいけません。 まだまだ検討中の段階ですが、店舗展開して将来的には従業員が独立をするときにお店を譲ることを考えています。 特にパティスリーは独立にお金がかかりますし、雇われの時は給与も低いからなかなかお金も貯めることができないのを僕もわかっているので。 もし実現できれば独立時の初期費用が抑えられるので、独立希望者のためには良いんじゃないかな、と考えています。
これから転職を考えている方達にメッセージをいただけますか?
宮脇: 伏見工業高校のラグビー部の山口 良治が言っていた言葉で「継続は力なり」というものがあるんですが、これは本当に大事だと思います。 一つのことをやり遂げることが一人前になるための、遠いようで一番の近道ですね。 いろいろ勤務先を変える人もいるけれど、転職を繰り返すことでそれまでに築いた経験やポジションがリセットされてまた一からのスタートになるので、結局近いようで遠い。 初志貫徹で継続することが大事ですね。僕も師匠から教わりましたが、人との繋がりは「財産」。 お金は使えばなくなっていきますが、人との繋がりはなくならない。悪いことをしない限り、人との繋がりは一生続くことをわかってほしいですね。 あと一人で考えずに、周りの人に助けを求めること。苦労しているのは自分だけじゃないので、相談できる仲間をつくって、アドバイスをくれる先輩達と付き合うことで、良い選択ができるようになると思います。